ロータリーのメリット
―ある公式訪問のなかから―


RID2560 パストガバナー 廣澤 純孝
(館林ミレニアムRC)


 私がガバナー(1983〜84)のころといいますと、もうだいぶ遠のきますが、ある公式訪問のときでした。協議会も済み、まとめのコメントに移ろうとした折、突然、はい!と威勢よく手を上げ、やや興奮した表情で質問してきた若い会員がいました。
 曰く「ガバナーに伺いますが、ロータリーのメリットは何でしょうか。ひとことでお願いします。」と切り込んできたのです。咄嗟のことでしたが、私は直ぐさまその質問に応えようとした矢先、長老とおぼしき会員が、つと立ち上り押さえきれないものがあるかのように顔を赤らめ、ガバナー、失礼ですがちょっと私に発言させてくださいとことわり、恰も質問者に言い聞かせるように語気強く言ったのです。
 「とんでもない。ロータリーのメリットは与えてもらうものじゃない。自分から引き出し、つかみ取って納得してゆくものである。そうでなければロータリーは、いつになっても他人でしかない。」と端的に直言されたのです。そのとき会場は水を打ったように静かでした。
 私は、この核心を射た長老の奥深い言葉に、いたく共感を覚え、ただ大きく頷き返し、敢えて弁を差し挟まず、回答は同席者のそれぞれの胸中に委ねました。そのあと講評のなかで、些かのロータリー体験を述べて終わりにした得難い思い出があります。
 以来、私にはそのときの情景が脳裏に焼きつき、いまもって忘れることのできない感動として息づいています。
 ロータリーは、長い歴史と伝統を持つ豊饒の世界です。それゆえ性急にメリットを意識してではなく、先ずは謙虚に、そして辛抱強くロータリーに溶けこむ努力を爲すことが大事でありましょう。そうした日頃のロータリー活動のなかから、やがて違和感も無く、いつの間にかロータリーに順応している自分が見えてくるのではないかと思います。そのときこそ既にロータリーがメリットとしてロータリアンの体内に、しかと植裁されている筈であります。
 あの一長老会員の投じた言葉は、ひとり質問者への回答にとどまらず、同席した他の会員に対しても、どれほどか良い影響をもたらしたかは想像に難くありません。
 さて、最後にひとことでロータリーのメリットは、と問われましたなら、それは出会いであり、友情であり、また奉仕の喜びであり、そして何よりも親睦がベースと、平凡ですが心をこめて私は答えるでしょう。
[INDEX] [TOP]