ガバナーメッセージ
「ロータリー財団月間」に寄せて


RID2840ガバナー 関口 隆
(前橋西RC)


始めに私の大好きな俳句をご紹介致します。
「明月を取ってくれろと泣く子かな」
1905年シカゴの一劃にポール・ハリスがロータリークラブを創設してからやがて100年になろうとして居ります。この間ロータリーは健やかな発展を遂げ現在見られる通り全世界的な組織に成長致しました。そのロータリーの基本的理念は「友情と奉仕」であり、奉仕の対象は我々の生活するすぐ周辺の場所から広大な地域に及び遂に海を渡り国境を越え国際奉仕に到達致しました。この高邁にして雄大なロータリーの理念を実現するのがロータリー財団であります。而うしてその活動の資源は全世界のロータリアンから寄せられる善意の総和であります。
天台の宗祖伝教大師が「一隅を照らすは国の宝なり」と山家学生式さんけがくしょうしきの中で述べて居られます。洋の東西を問わず人間社会に対する奉仕とはかくあるべきものと確信して居ります。
ご存知の通り財団の行う活動は大きく分けて人道的奉仕、国際奨学金及び国際文化交流であります。
「一粒の麦地に落ちて死なずばそのままにてあらん。若し死なば多くの実を結ぶべし」とは新約聖書にあるキリストの教えであります。
私達の財布の中の1万円札をそのまま温存すれば何時迄も自分達にとって1万円の価値あるものであります。しかし、その1万円札を善意の寄付として然るべき処に贈れば、その価値は消失しますが、何処かで大きな実を結ぶことでありましょう。これが無償の奉仕であります。ロータリー財団はその善意を、定められた規則により寄付者の意志を代行して実行する活動団体であります。
ポール・ハリスがロータリークラブを創設するとき奇しくも「政治にも宗教にも関係なく」と言明致しました。
ロータリーの奉仕活動の基本的な考え方について私見を申し上げました。
又、月の話に戻ります。
日本人には古来月を眺め詩や歌を詠んで来ました。月は濁世じょくせの生活からみれば限りなく美しく、神聖なものに見えたことでありましょう。澄み切った秋の夜空に煌々と輝く明月は清淨そのものであります。
私達は人間でありますから多くの欲望に囚われて居ります。しかし、ふと冲天に浮かぶ明月を眺めた時の、心の洗われたような境地になることが有るかもしれません。無償の善意を捧げた時の気持ちはきっとその時のようなものではないでしょうか。
大正12年の関東大震災の時アメリカの国際ロータリーはいち早く大阪へ多額の義捐金を電送し、アメリカの多くのロータリークラブは救援物資を満戴した船を横浜に送りました。
大東亜戦争の敗北で文字通り城下の盟いを交わし、物心共に叩きのめされた日本の向学心に燃える青年に、数年後救いの手を差し延べたのはフルブライト奨学金制度であります。その後、日本の再興に大きく貢献したのはこの時の留学生達であります。
今私は、こんな歴史を回顧して感慨に耽って居ります。
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