「21世紀のロータリーを考える」
−日本の人口減少と価値観の変化−
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世界のロータリアン数は1997年から会員数は確実に減りだして、今年の7月までに
全世界で2.7%の減少を示した。一方、日本の会員数は一年早く、1996年から減りだ
して本年7月までに7.6%の減少を示し、この減少率は世界の減少率の 2.8倍であ
る。 このような事実に直面し、我々は危機感を持たざるを得ない。20世紀は夢を追う 世紀であったと思われる。20世紀初頭、アインシュタインが相対性原理を発表し、 ライト兄弟が空を飛ぶことに成功して以来、人類は果てしない文明の進歩を夢見てき た。ロータリーも、ジェームス・レイシーRI会長の「ロータリーの夢を追い続けよ う」というテーマに象徴されるように、ロータリーの夢を追い続けてきた。 しかし、来るべき21世紀は、生き残りを賭けた世紀であると思われる。地球レベ ルでは環境問題や人口問題で世界の全人類が共に生き残りを賭け、国家レベルでは民 族・宗教紛争問題、或いはエイズ対策で生き残りのために莫大なエネルギーを使い、 企業レベルでも世界的に従来とは次元の違った生き残りの戦略を考える世紀になりつ つある。 独りロータリーだけが、この例外として止まることは出来ないであろう。21世紀 のロータリーは、生き残りを賭けて進化しなければならないであろう。 今や我々を取り巻く環境は、経済不況と共に、少子化による人口減少という社会生 物学的な問題と、価値観の変化という社会心理学的な問題に直面している。 日本の少子化はこれ迄の予想を超えた速度で進行し、1999年の合計特殊出生率は 1.34と最低記録を更新して、遂にイタリアに次いで世界第2位の少産国となるに至っ た。このままでは、日本の人口は2007年から確実に減少に向かい、100年後の 22世紀には、中間値をとっても人口は半減して6千万人台になると予想されている 。現時点での現実問題としては、十数年前に始まった幼稚園の園児の募集難が、現在 では大学の定員割れを招くに至った。この趨勢が遠からずしてロータリーにも波及す ることは避けられないであろう。 日本の総人口が減り出すのは2007年からであるが、それまでの人口増加は高齢 者の増加によるものであり、15歳から64歳までの、いわゆる生産年齢人口は現在 既に減少し出している。近未来の問題として、生産年齢の人口は15年後に18%減 少し、50年後には約40%減少すると予想されているから、ロータリーの新会員と して迎え入れるべき年齢層の人口が今後益々減少して行くことは避けられず、従って ロータリアンの数も、日本では必然的に減少せざるを得ないと言えよう。 この予想される会員減少を考えれば、我々は近い将来において会員増強の概念を根 本的に考え直さざるを得ないと思われる。また、そうした会員減少の事態に備えて、 今の内から将来の日本のロータリーの会員基盤維持のあるべき姿に就いて、その対策 と、21世紀に相応しいロータリー理論を構築しておく必要が生じるであろう。 即ち、これからの会員減少は社会生物学的な立場から当然の帰結であると考えられ 、従来から右肩上がりの会員増加が、無批判的に「会員増強」の目標とされてきたが 、そうした「1億、総ロータリアン」的願望志向は、やがて改めて考え直す時期を迎 えるのではないかと思われる。 しかも、この少子化・人口減少の問題は多かれ少なかれ西欧先進国に共通した課題 であり、これは財団寄付の水準の高いロータリアンの比率が将来は減少することを意 味している。この点からも、ロータリーはロータリー財団の奉仕に関する将来像を堅 実に見直しておく必要があろう。 新会員勧誘についての人口減少の影響は、まだ将来的な問題であると言えるが、現 時点での最も顕著な現象は、経済不況の波と共に、これからロータリアンとして迎え るべき世代の人たちの価値観の変化であろう。年会費などの経費に対する価値観を始 め、様々な価値観の変化が目立つが、時間についての観念の変化が最も支配的である と考えられる。 私たちはこれから新会員として迎えるべき新世代の人たちの、こうした価値観の変 化を積極的に理解し、私たちの価値観を押しつけることなく、しかもロータリーの持 つ教育力に期待して、ロータリーの正しい方向を見失わないようにしてゆく必要があ ろう。 私はロータリーの未来は明るいと確信している。私たちは、経済不況という流動的 な障碍ばかりでなく、このような人口減少や、価値観の変化という構造的な問題に直 面しているが、ロータリアンの英知をもって、この会員基盤の維持という永遠の課題 を解決して行く必要があり、またそれは可能であると信じるものである。 |
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