ポリオ、ご年配の方には「小児まひ」といった方がわかりやすいかもしれません。かつて、日本でも大流行をしたことがありますが、ポリオウィルスは手や足などにまひを起こさせることがあります。肺の筋肉がまひすると、呼吸ができなくなって死に至ることもありますし、足がまひして歩けなくなることもある恐ろしい病気です。
1979年9月、国際ロータリーは、フィリピンで、生後3か月から36か月の子ども約600万人に対して、5か年計画のポリオ免疫活動を始めました。これが、ロータリーかポリオ撲滅に取り組んだ第一歩です。
1985年、国際ロータリーでは、ロータリー創始80周年に当たって、「ポリオ・プラス計画」を発表。プラスとは、はしか、ジフテリア、破傷風、百日咳、結核を指しますが、ポリオだけでなく、これらの病気についても予防接種を実施することになりました。
1985年は、国連総会で、ユニセフの「予防接種普及事業(EPI Expanded Programme of Immunization)」推進決議が、国連40周年記念事業となった年でした。当時、各国元首とともに、ロータリーもNGO(非政府組織)として、この決議に賛同、署名しています。
日本では、これに先駆けた1982-83年度、東京のロータリアン(ロータリークラブの会員)たちが、南インドにポリオワクチンを送り、地元のロータリアンと協力して子どもをポリオから救うことを計画し、実行しています。
日本国内では、募金総額40億円を最終目標として、1986年7月から、5年計画のポリオ・プラスの募金キャンペーンが始まりました。日本中のロータリアンの積極的に取り組み、このキャンペーンが展開されていた1986年7月から1991年6月までの5年間で、目標額をはるかに超える約49億円の寄付金を集めることができました。
国際ロータリーでは、1989年6月までの3年間をキャンペーン期間としていましたが、この間で米貨2億4,700万ドル(約270億円)を集めました。これは目標額の2倍に相当します。
ロータリーが創立100周年を迎える2005年2月にまでにポリオの撲滅を実現しようと、国際ロータリーでは、2002年に、新たな「ポリオ撲滅キャンペーン」を展開しました。この時点で、ポリオは99%撲滅したといわれていましたが、残りの1%は、紛争地帯やへき地など、ワクチンを投与するのに困難な地域が多く、それまで以上に多くの資金とを必要としていました。目標額は8,000万ドル(約90億円)です。この結果、2003年6月末の時点で、誓約も含めて1億1,150万ドル(約126億円)以上が集まりました。
さて、1979年、ロータリーが初めてポリオの撲滅に乗り出して以来、ロータリアンたちは、もちろんお金を集めていただけではありません。多くのロータリアンが道路もないようなへき地に分け入り、紛争地帯に赴き、実際にポリオワクチンを子どもたちに届けるための活動もしています。紛争地帯では、双方の代表者を説得してポリオワクチン投与のために一時休戦にしたり、宗教上などの理由からポリオワクチンの投与を拒む人々を説得したり、さまざまな活動をしてきました。
世界中のさまざまな地域にロータリークラブがあり、ロータリアンたちが活動をしています。それぞれの地域で、ロータリアンたちがさまざまな形で、すべての子どもたちにポリオワクチンの投与をするために努力を続けています。
ポリオ撲滅に向けて、ロータリアンたちは努力を重ねてきましたが、このために調達した額は、2007年時点で、6億6,300万ドル(約750億円)を上回ります。
2007年11月26日、国際ロータリーは、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と協同して、世界ポリオ撲滅に必要とされる2億米ドルを投入することを発表しました。ゲイツ財団から1億ドルの補助金を受領したロータリー財団は、この時点から3年間にこれと同額の資金を調達するための募金活動を行っていくことになっています。
ロータリーは、世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)における予防接種活動を直接支援するために、2007年11月から1年以内に、最初の1億ドルを投入していく予定です。世界ポリオ撲滅推進計画とは、世界保健機関(WHO)、国際ロータリー、米国疾病予防管理センター(CDC)、ユニセフが協同して主導する活動です。(詳細は)
ポリオの残る国は、アフガニスタン、インド、ナイジェリア、パキスタンの、あと4かとなりました。しかし、最後の闘いはこれまでで一番大変な闘いとなるでしょう。日本ではポリオは遠い昔の話になりましたが、世界には、ポリオの後遺症で苦しんでいる人がたくさんいます。グローバル化した現代のこと、ポリオとの闘いを終わらせない限り、日本に、この恐ろしい病気がまた入ってきてしまうかもしれないのです。
街でポリオ撲滅のための募金を呼びかけているロータリアンを見かけたら、ご協力ください。子どもたちが安心できる未来のために。